1. 情報倫理とは

 20世紀の後半に爆発的に発展したテクノロジーが人間社会に突きつけた新しい問題に既成の社会的諸規範が即応できず,現代社会特有の倫理的衝突の解決が求められてきました。このような社会的要請に応えて,「生命倫理」や「環境倫理」といった考えが生まれました。そもそも,「倫理」とは「人として行動すべき道,人のあるべき姿」のことです。

 コンピュータサイエンスの急速な進歩,さらにはインターネットに代表される世界的なコンピュータネットワークの発達がもたらした倫理的問題の解決は,緊急度において,最大級の課題になっています。特に,コンピュータやネットワークの不正使用,ネットワークと文化間摩擦,プライバシー管理,ネットワークにおける著作権や責任といった問題は,早急に議論され,解決されなければなりません。本テキストでは,「情報化時代における個人と社会のあるべき姿」を「情報倫理」と呼びます。順序としては,「社会のあるべき姿」が規定されて初めて「個人のあるべき姿」が定まるのですが,実際には,社会のあるべき姿は十分には論議されていないのが現状です。一方,個人のあるべき姿に関しては,ある程度の議論の積み重ねがあるといってよく,情報科学に関連した学会の「倫理綱領」などは,情報通信技術に関わる研究者や技術者に対し,高い職業倫理観を要求し,具体的な行為規範を示しています(例えば,情報処理学会, 1996; 電子情報通信学会, 1998)。

 情報倫理に関わる問題は多岐にわたりますが,本テキストでは,「ネチケット」,「知的所有権」,「プライバシー」などを取り上げます。

 

参考文献

情報処理学会, 情報処理学会倫理綱領, http://www.ipsj.or.jp/gaiyo/ipsjcode.html, 1996.

電子情報通信学会, 電子情報通信学会倫理綱領, http://www.ieice.org/jpn/about/code.html, 1998.