6. 勉強の仕方

 

1.   大学の数学の学習には、「受験数学」を超えた理解を求められます.

 受験数学では、自分でも何をやっているか理解していないのでもかかわらず、とにかく点数を稼ぐために、覚えた公式を振り回して、それらしい答えを出して終わりにしがちです.大学では、数学を自分で納得行くまで理解することが要求されます.

大学の数学は、様々な現象をより深く、より体系的に探求できるようにするために、だんだんと抽象的な理論へと向かっていきます.それらは、中学校や高校で学習した数学の背景にある一般的な仕組みを捉えるものです。このような一般的な仕組みを理解していくには、「そういう風に書いてあった」「先生がそうやっていた」だけの理解で終わりにしない姿勢が大切です. 特に数学の先生になろうという人は、「なぜ、どうして、そうなのか」ということを理解しようと心がけてください.みなさんが教師になって教壇に立ったときに、生徒から「どうしてそうするの?」と問われて、「知らない.ともかく、そうやるって覚えればいいんです」としか答えられないようでは困ります.

2.   数学の勉強の仕方

 大学で教えられる数学の内容は、今まで高校で習った内容に比べて非常に抽象的である。しかも、専門的な数学の内容になるほど、その抽象性は強くなってくる。例えば、大学では、高校でも学習した微分積分学、線形代数学(行列の理論)等の学習も行うが、高校の時よりも論理性が重視された授業内容になっている。更に、集合論、群論、環論、位相幾何学、測度論などの内容は、抽象的な度合いが非常に強く高度の論理性を要求するものである。もし、これらの数学を数学の専門家になるために深く学びたいと思うならば、教科書の精読しかないだろう。精読とは、例えば、教科書の数ページを教官の行う授業などを参考にしながら学習し、完全に理解出来たと思ったら、教科書や授業ノートなどを一切見ずに今理解したと思った内容をすべてをノートに再現する、この作業を続けて教科書を読破することである。もし、このとき理解したと思った内容の再現に躓いたとしたら、その躓いた箇所は正確に理解していない訳である。この精読を実行するとなると、かなりの忍耐力と覚悟が必要である。

 では、数学における考え方が知りたい、数学が利用できるようになりたい、数学で高度の論理性を身につけたい等思っている場合は、どの様に数学の学習を進めていけばよいであろうか。それは出来るだけ、多くの演習問題を解くことである。演習問題は、授業中、担当の教官から十分に渡されるであろうし、また、教科書、参考書中に見つけることが出来るはずである。ここで注意してもらいたいのは、演習問題を解くにあたり、答えが正しいことよりも、その解答過程が論理的に正しいかどうかということに注意を向けてほしいということである。解答過程に注意して問題を解くことにより、学習している内容についての一種の数学的直感と、論理性を養うことが出来るのである。この一種の数学的直感と論理性は数学を理解する上で非常に重要なものである。よく答えが正しければよいと考えがちであるが、これでは演習問題を通して、数学的内容の理解も、論理性の修得も出来ない。また計算間違い等のケアレスミスが、どうでもよいといっているわけではない。計算等の基本が出来ていなければ、数学の問題を正しく論理的に考えるのは不可能である。サッカーでパス、ドリブルが正確でないといい試合が出来ないことや、ピアノでスケール、アルペジオ等が出来ていなければいい演奏が出来ないことと一緒である。

  さて、演習問題を実際に解こうとしたとき、何をやってよいのか分からない場合がある。こういうときは、教官、友達に質問すればよい。質問することは学問をする上で重要な事の一つである(もちろん、授業内容等で分からない場合も、積極的に質問する事が大切である。)。ただし、”何をやってよいのか分からない ”にも大きく分けて、2つの分からないがある。まず一つ目は、演習問題において、どこが分からないかはっきりしている場合である。この場合は、積極的に質問するとよい。二つ目は、何が分からないかが分からない場合である。この場合は、解こうとしている問題以前の段階(内容)に理解していない点があることが多く、まず、どの部分で分からなくなっているか自分自身で考えはっきりしてから質問するようにすべきであろう。

3.   計算機科学の勉強の仕方

 コンピュータは複雑な回路がぎっしり詰まったやけに難しい訳のわからない機械と思っていませんか。確かに複雑な機械ではあるけど,大きく分けて5つの要素からできているに過ぎません。電子計算機と呼ばれる物ができてから50数年経ちますが,このこと自体は全く変わっていません。50数年の間に何が変わったかといえば,微細加工技術の発達によるLSIや様々な部品の性能向上と人間が楽にデータなどを入力したり処理結果を見ることができるようなインターフェースの向上です。これから計算機科学を学習していこうというわけですが,計算機科学はとても広範囲です。計算機について何をしたいかによって学習内容は違ってきます。

 コンピュータをただ単に使うだけ,出来合いのアプリケーションソフトを入れて使うだけというのであれば,そのコンピュータの基本的な使い方と各アプリケーションソフトの使い方を中心に学習すればいい。この場合は習うよりも慣れろ,つまずいたらわかっている人に聞く,こんなことはできないかといろいろ試してみる,というのが一番早く上達するコツです。コンピュータを動かしている基本ソフト,これをOperating System略してOSと呼んでいますが,このOSの働き方でコンピュータの使い方,使えるアプリケーションソフトが違ってきます。現在パソコンで使われているOSには大きく分けてWindows,Unix,MacOSの3種類があります。数理情報コースでは,このうちのWindowsとUnixを1台のノートパソコンに組み込んで使い分けることになります。この2つのOSの違いを楽しんで下さい。

 次に,もう一歩進んでコンピュータに自分の思うままに独自の処理をさせたいというならば,計算機言語を学習してプログラムを作成しなければなりません。プログラム作成には問題の設定,解決の方法(アルゴリズム)の選択,コーディング,動作チェックといった一定の手順があります。プログラムの設計図ともいうべきフローチャートを作成してからコーディングに取り掛かるのが正しいやり方ですが,残念ながら少なくても学生にはなかなか定着していません。たとえ小さなプログラムでもアルゴリズムを箇条書きで示す程度の習慣は最低限身に付けるべきです。計算機言語には英語などの自然言語と同様に文法があります。文法を知らずにプログラムは作れませんが,文法を詳細に覚える必要はなく,大雑把に理解しておいて後は必要に応じて文法書を見直すようにすればいいと思います。プログラムの対象によっては,計算機言語の知識だけでは足りず,行列,編微分方程式等の数学や物理,電気あるいは簿記といった関連する知識が必要になります。音声や画像を取り扱うにはそのためのハードウェアの知識が要求される場合もあります。

 以上はコンピュータを使う場合の話でした。コンピュータそのものを学習理解したいなら計算機科学,さらに広げて情報そのものをとことん学習したいのであれば情報科学といわれる分野を学習しなければなりません。計算機科学は情報科学の一分野であり,コンピュータシステムそのものを対象にしています。情報科学はとても広範囲です。コンピュータは目に見える情報科学の成果のひとつといえるでしょう。計算機科学の学習に的を絞りましょう。まず,第一段階としてコンピュータの概要を知るところから始めます。コンピュータの動作の大まかな仕組みと内部でやり取りされるデータの表現形式,基本ソフトの役割,プログラムの大まかな設計方法などがこれにあたります。次に,第二段階としてコンピュータの各構成要素内の仕組み,具体的には演算装置や制御装置といった装置の論理回路の構成と動作の仕組み,および機械語と呼ばれる最も基本的なプログラムコードの存在を学習します。論理回路を理解するためには論理代数(ブール代数)を理解している必要があります。できれば,電気回路,電子回路の基礎知識があれば都合がよいと思います。また,各構成要素を効率良く動かす方法としてOSの仕組みと働きを学習します。第三段階としては,実際にコンピュータに触れることです。例えばマイクロコンピュータはOSの機能は貧弱ですが,コンピュータの論理回路と機械語を理解するのにはとてもよい学習教材になります。ここまでくれば,後は自分の興味に応じて関連する,例えばデータベースや人工知能,認識などの個別の応用分野,コンピュータネットワーク,符号化,暗号化などの通信分野,デバイスや回路設計の分野など多くの分野に目を向けて学習していって下さい。

 最後に,パソコンは汎用大型計算機で培ってきた様々な技術を未だに移植している最中であり,パソコンを完成されたコンピュータと思ってはいけません。新しい技術もどんどん生まれてきています。最先端を生きるには,今何が問題になっているかを知り解決策を考えることです。パソコンについて言えば,とにかく使い込んで限界を知ることでしょう。



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